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記事一覧

タイムマインド(潤一編)(80)

「よく平気でそんなことを言えるよな!」 言うが早いか、僕は宮崎の首を絞めた。彼女は机の上に倒れ込んだ。 めまいが激しくなった。吐き気もする。視界に映るすべてのものが幾何学模様にゆがむ。頭の中は真っ白だった。 すると、一瞬、目の前を何かがよぎった。さきほどの蝶が飛んでいるのだ。 ──もう会えないと思っていたよ。 僕はそうつぶやいた。ふしぎと穏やかな気分になれた。 そのとき宮崎が起き上がって、逃げ出した...

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タイムマインド(潤一編)(79)

 しかし、宮崎は首を横に振って、拒絶した。「誰?……久野君じゃないみたい」「何言ってんの? 僕は僕だよ」「まるで何かに取り憑かれているみたいだよ」 ふたたび心臓が飛び跳ね、鋭い痛みが走った。 僕は怒りを覚えた。なんで素直にしたがってくれないんだ、これじゃあいつまで経っても思い出せない! 僕は素早く宮崎の肩をつかみ、激しく揺さぶった。彼女は短く呻いた。 怖がることはないよ、と僕は言った。「前世を思い出...

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タイムマインド(潤一編)(78)

       二十三「火垂るの墓」と「魔女の宅急便」を観て、「おもひでぽろぽろ」の途中に、校内放送が入った。間もなくメインイベント、フォークダンスがはじまります、校庭に集まってください、と。 みんなが一斉に立ち上がって教室を出ていった。仕事に行ったのだろう、母の姿はもう見当たらない。 いよいよだな、と僕は心の中でつぶやいた。「久野君、早く片づけないとはじまっちゃうよ」 宮崎はそう言いながら机と椅子...

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タイムマインド(潤一編)(77)

 そして文化祭の日がやって来た。天気予報では夕方から雨が降るらしく、みんなで火柱を囲い「マイムマイム」の曲に合わせて踊る、という、文化祭には欠かせない恒例イベントが行われるかどうか、心配だった。小降り程度なら予定どおりだろうが、本降りになるとだめだ。今は晴れているが、これからどう天候が変わっていくかと思うと、僕は内心慌ててしまう。 映画係の僕たち四人は、午前の部に二人、午後の部に二人、それぞれ分か...

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タイムマインド(潤一編)(76)

       二十二 宮崎はやっぱり信じてくれなかった。説明だけでは無理だった。期待していたわけではないが、しかし、頑なに拒否されるのは、痛かった。惣一や惣次の人生が否定されたようにも感じられたからだ。 彼女は、僕が前世に左右されていると言った。僕は固まってしまって、何も言えなかったけれど、よくよく考えてみると――しかたないじゃないか、と思う。はじめて会ったときに相手に感じる「一目惚れ」や「第一印象...

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