FC2ブログ

記事一覧

北島理恵子さん詩集『ぬり絵』(版木舎)を読む

「おとこのこも おんなのこも/すわっていた石段も/乳母車も 水飲み場も/仔馬の乗り物も/そこではすべて 細い線で縁どられていた」
 表題作「ぬり絵」のはじまりは、さびしい。いろのない、ほそく、せつない輪郭線のみの世界。北島さんは、あえて記憶のかごをゆらして、そこからこぼれるものをていねいに、すこやかにいとおしむ。なんてせんさいであやうい感性なのだろう。
「背景には 人けのない神社があった/古い木戸があった/廃屋と廃屋の暗がりに/海へ抜ける ひみつの路地があった/どこか なつかしい場所へとつながっている」
 北島さんは〝色〟や〝線〟を聴覚的にとらえているような、そんな気がする。視覚では見すごしてしまうものを、耳で、こころで。だからこそ、死や影、ねむりにたいして敏いのだ。
「消えてしまったのに 消えてはいない/もう会えないのに そこにいる/ひょいと 端を引っぱれば/ひと筆書きのように/たやすくほどけてしまいそうな 午後」



北島理恵子さん詩集『ぬり絵』(版木舎)


スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント