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タイムマインド(潤一編)(75)

「……なんで、そう思うの?」
「痣」
 僕は言った。
 彼女は眉間にしわを寄せて、痣? と聞き返す。
 気分を悪くしないでほしいんだけど、そう断ってから、僕は注意深く言葉を選びながら話した。
「翔ちゃんが、宮崎のスカートをめくったことがあっただろ? あれは……つまり、確認したかったからなんだ。翔ちゃんがわざとやったことではなくて、宮崎の足に痣があるかないか、調べたかったんだ」
「あたしの左の太ももには、たしかに痣があるけど。どうしてわかったの?」
「まあ、わかったっていうか──早川愛美に、痣があるんだ。それも、宮崎とまったく同じ場所に」
 彼女は首をかしげた。だから、何? という感じだった。
「前世の痣や病気は、現世にも引き継がれるケースがあるんだ」
「へぇー、おもしろいね。もしかしたら、あたしはずっと昔、久野君の恋人だったかもしれないんだ」
 あっさりと受けとられてしまい、僕は落胆した。前世療法を受けていない人にとってはそんなものだろう。だけど、まだ引き下がるつもりはない。もう少しねばってみよう、と思った。
「宮崎も、前世療法、受けてみない? 奥田愛子と早川愛美の人生を思い出せるかもしれないんだからさ。興味、あるんだろ?」
 興味はあるけど……、と、宮崎はどこか不安そうな声だった。
 彼女は、しばし口ごもってから、
「前にも言ったけど、自分の前世を見るなんて、怖いよ。生まれる前の自分を知ってしまったら、その人に左右されてしまいそうで……」
「怖くなんかないよ。だって、自分は自分なんだからさ」
 僕は笑って言った。
「前世を見たからって、それは一つのストーリーなんだって割りきったらいいんだ。映画を観ているようなものだってね」
「久野君は?」
 と、宮崎は強めに言い放った。
「久野君なんて、すごく前世に固執しているじゃない」


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