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タイムマインド(潤一編)(52)


       十五

 愛と別れてからというもの時間は急速に流れていった。修学旅行も春季運動会も空しく、勉学にも集中できなかった。別に愛との別れに未練があるわけではなく、冷静に考えてみると――あそこまでひどく当たらなくてもよかったのではないか、と後悔の波が押し寄せるのだ。二年近くつき合い、楽しい時期だってあったのに、最後の最後で彼女を傷つけてしまった。もう少しじっくりと話し合うべきだったと思う。何度も連絡しようとしたが、結局愛に電話をかけることはなかった。
 変わったことといえば――バスに対する恐怖がなくなった。あんなにもバスをおそれていたのがまるで嘘のようだった。何回か長谷川クリニックに通ったが、異常は見当たらず、精神も安定していると言われた。クマ先生に今の無力感を話したところ、恋人との別れにともなう喪失感だと笑われたが、僕は、それだけではないように思えた。
 宮崎初美の存在を、クマ先生には話してない。たぶん、彼女が僕を悩ませているのだと思う。僕はいつも彼女のことを考え、気になっているが、なぜそんなにも惹かれているのか判然としなかった。


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