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タイムマインド(潤一編)(48)

 新しい年を迎えた。僕と早川は受験勉強に励み、同じ高校に受かった。担任の先生は障害者向けの学校をすすめてくれたが、僕はやっぱり普通の高校に行きたかった。なぜなら早川の顔が毎日見られるからだ。彼女のいない場所なんて考えられなかった。
 そして春休みになり――僕の家で、早川はとうとつに、
『鳥取と言えば砂丘だよね』
 と言った。
『どうしたの? 急に』
 僕は聞いた。
『今読んでる本に出てくる恋人たちが、地元の観光名所をめぐり歩いてるの。とても楽しそうに。だから、鳥取の観光名所は砂丘だよなあって思って』
『じゃあ、行ってみようか!』
 僕は言った。
 でも、と早川は憂い顔になった。
『遠出しても、いいの?』
 足のことを心配してくれているのだろう。僕はにっこりと笑って、
『車椅子だから、砂の上には行けないかもしれないけど、近くから砂丘を眺めることはできると思うし──それじゃあ不満?』
 ううん、と早川は首を振り、
『惣ちゃんと砂丘を見られるのなら、それでじゅうぶん』
 その夜、僕は両親と話をした。父さんも母さんもかなり渋っていたけれど、しまいには納得してくれた。
 春が風に運ばれてきて小鳥の声も耳に馴染んできた。その日の朝、僕と早川はバスターミナルへ行き、リフト付きの観光バスに乗り込んだ。僕と早川が最後列の席に落ち着くと、バスガイドが短く自己紹介をし、バスは発進した。


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