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二月

(目の粗いレースのカーテンのむこう側へいくまえに、視線はいちど、窓ガラスのなかで屈折するが、そのとき、ぼくの肺腑の闇のなかでも屈折するのは、息。しろい息だ。)

   *

だれかが乗り捨てた自転車に、だれかが乗って、ふるい方位を気ままに走るのは、いったいなんの傷心だろうか。
無人の自転車のペダルだけが、そのまま、だれかの存在証明のように、えんえんと回転しつづけるのを目撃するのは、いったいなんのきざしだろうか。
どこからともなく雪の花びらが風に運ばれてくる。雪を見ていると、耳の奥がくすぐったくなる。風の奏でる音が聴こえてくるのだ。音符のような、ささやかな音のかけらたち。見えない楽譜のうえに着地するなり、そのまま消えてしまう。

   *

(ふいに風の輪郭がほどけて、ありもしない種子の、ありもしない胚芽をくすぐる。)


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