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(ふと視線をあげると、)

(ふと視線をあげると、)(1)



本を読み返すと、あちこちに痕跡が残っている。視線の跡、というよりは、思考のしるしだ。見えない染み。ありもしない記憶。



(ふと視線をあげると、)(2)



ふと視線をあげると、行方知れずの恋、というものの恋の行方をさがしているひとがいるはずだと、勝手に想像してしまうじぶんはいったいなにものだろうとおもうのだが、そんなことは一切おかまいなく本のページをめくっているわたしは、いまだに視線を下げたままである、というじじつにいささか驚きを禁じ得ない。しかし、行方知れずの恋、というものの恋の行方をさがしているひとがいるかどうか、確認するためにもとりあえず視線をあげる必要があるにはあるのだけれど、どうしても視線を本からはずしたくないのは、行方知れずの恋、というものの恋の行方をさがしているひとを確認することにすこしだけ気後れしているのではないか。というのも、行方知れずの恋、というものの恋の行方をさがしているひとがいたとして、そしてあろうことかそのひとと目があったとして、じぶんはどう反応を返せばいいのか、たとえばゆるりとほほえんだらいいのか、それともおごそかにうなずいたほうがいいのか、皆目見当がつかない。だからまだ、本を読むふりをつづけていよう。勝手に想像をめぐらしてしまうじぶんが、行方知れずの恋、というものの恋の行方をさがしはじめるまで。



(ふと視線をあげると、)(3)


(ふと視線をあげると、)(4)



読書。という行為の、その暗がりは、わがままをいえば青みがかった生臭い巨大な水槽のようなものの切実な空間……。



(ふと視線をあげると、)(5)




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