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(いくすじもの冬の日ざしが)(絵・ひがしもとしろう)

(いくすじもの冬の日ざしが)(絵・ひがしもとしろう)



彼女の部屋は砂丘の地下にあり、
ときどき、砂時計のように砂がふってくる
――いつか埋もれてしまうよ
いくらぼくが忠告しても、わらっている
本棚のうえでは猫があくびをしている
午後は「あおむけの蟬」になるのだという

   *

雨を思う前に、
水のにおいをさせていた

湖のほとりには、なにかしら
花のきざしがあるのかもしれない

まなざしが遠さを見ることはない
すでに甘い香りに包まれていた

ゆらめく影を壊すまで

   *

いくすじもの冬の日ざしが
氷柱のように路地に射し込んでいて
一羽のことりの愛を燃え上がらせている

人々の影はピサの斜塔のように
ななめに伸び縮みをくりかえしながら
一羽のことりの死に沈黙せざるを得ない

時計の針はひややかに
なおもわたしの耳を打ちつづける




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