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身の丈にふれる(写真・時本景亮)

身の丈にふれる(写真・時本景亮)
(写真・時本景亮)



きょうもまた、駅のプラットホームに自生している名無しの権兵衛
だれもがうわべのみのあかるさであいさつをかわしながら
身の置きどころのない所作をくりかえしている

あおむけになったセミや自転車の鍵、ケータイの着信音……
ほんとうは行くあてもなく、会いたいひともいない、というのに

生命線の長さでもたしかめているのだろうか
手のひらをじっと見つめているひとがいる
どこかひとごとのようにたたずむひとの群れのなかで
そのひとだけが目をみひらき、なにかをたしかめている
もしかしたら、わたしがここにいる、ということが
なにものにもかえがたい感触を得られるときこそ、
そういったときこそはじめてわたしは、
このわたし
を抱きしめられるのではないか
いつものいたみやきしみ、
ずれやゆれさえもまるごとひきうけたうえで
ごく自然なやりかたで
だれかの身の丈にふれてみたい、とおもう

あおむけになったセミや自転車の鍵、ケータイの着信音……
ほんとうは行くあてもなく、会いたいひともいない、というのに

きょうもまた、駅のプラットホームに自生している名無しの権兵衛
だれもがおなじように夢に似た物質をたずさえたまま
まむかいのひとやとなりのひととつながっているふしぎ

いったいいつからだろう、わたしはこのわたしの
身の丈にふれることさえままならない




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