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十月(カワセミ、爬虫類、如雨露)


映画[ソラニン solanin] - ROTTI / ソラニン



木の葉はひかりになるまでひるがえる。木の葉はひかりをふくんで、ありもしない日付をおもいださせる。さえずる木陰、さえずるこもれび。木から木へ、枝から枝へ。胸のいたむような記述を読み継ぐこと。黒いつば広の帽子をかぶった紳士的な犬が、いまにも二本脚で立ちあがり、あいさつをかえしてくれそうだった。

   *

土手沿いを歩く。中州のカワセミは瞬時に日ざしを集め、瞬時に鏤める。岸が、まぶしい。

   *

ぼくたちはこんなにも息苦しい沈黙を
生まれながらに抱えて
生きている
ここがどこであるかも判然としない

他人にむける視線さえもまったくおなじ角度で
じぶんでも気づかないうちにだれかになりすましている

いつもどおりここにいるのだと
そのように見つめるしかないのか

   *

スーパーの惣菜コーナーでなつかしいひとと出会った。以前よりすこしやせているようだったが、目尻や口もとの微笑の具合はそのままだった。

「お、はよう」と彼女はいった。
「お、はよう」ぼくは彼女の口調をまねてみた。

あいかわらず書いているんでしょう、といわれた。赤ん坊が、わらっていた。

赤ん坊のまなざしは、まるで洗いたてのタワシのようにうつくしい。なにやら饒舌に語りかけてくるものの、あまりの語彙の豊富さ、あまりの思考の早さに、ぼくはあっけにとられてしまう。

   *

かたむく、
ゆうぐれの町

ふいに風の輪郭がほどけて、天使のぬけがらが空にまいあがる。壜のなかに爬虫類を閉じこめて海にながしたあの日――。

もはや虹を惜しんでいるのは
如雨露だけだ




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