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群衆(15)(絵・ひがしもとしろう)

群衆(15)(絵・ひがしもとしろう)



 プラットホームに人だかりができている。駅の電鈴が響いて電車がやって来る。目の前の男の首筋にはいくつもの血管が浮き出ている。耳の穴から一本、長い毛がにょきにょきと出ていて、微かに風の流れに反応を示すのが面白い。ふいに、この電車に乗ってはいけない、とりあえずこれは見送った方がいい、という直感が働いた。直感、あるいは危機感のようなものが。頭が痛い。眩暈もする。反射的に二、三歩、後ずさりした。ベレー帽の女性とぶつかった。何か言ったようだったが、よく聞き取れなかった。紺のズック製のリュックを背負った、背の高い男が私を笑った。どこかで見たことのある顔だった。さあ、明け方の国だ、と白髪の男が呟いた。




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