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十月(みずどり、みみず、みずいろの風)


Frank Harrison Trio - The Riddle Song



旧暦のみずどりの弦が
不法にも岸辺のまどろみを
引き裂く十月
その直観にたえずなにかをさがすふりをしながら

季節はずれのむなしさが
たちまちたびびとの祖型を呼び寄せる

   *

ときどき、石を拾う。その固有の手ざわりのなつかしさを、なつかしむために。ひとそれぞれ、こんなふうに固有のなにかを――いたみやきしみを――かかえながら生きているのだ、なにもじぶんだけではないと、なんどもじぶんじしんにいいきかす。針金かとおもったら、ミミズだった。

(真昼の真っ只中、
あなたが晴れた明日を拾うと、
親切な人が来るだろうか?

温かい人、
落葉を一枚拾う

手のひらに、さようなら
カタツムリの殻を置くまで)

あ。みずいろの風。あまりにもまばゆく、あふれこぼれるほどの鳥たちのさえずりやはばたき。ぼくはまだ、すみやかに遠ざかっていくものにすなおに手をふることもできない。
はじめて、あおぞらはさびしいものだとおもった。

   *

舟をだす。音をたてないように、いっそう理知的に。櫂をなだめながら。

その海岸に打ちあげられたのは憔悴したクジラだった。身動きをとることも、夢を見ることもできそうにない。呼吸の作法さえもわすれてしまったかのようだ。固唾をのんで、クジラを見守った。来る日も来る日も。

沖までいったのはいつだったか。雨がふっていた。ほとんどささやきに近い。まるでタイプライターのように。じぶんにふさわしい場所ははじめからなかったのだと、うしろをふりむかぬよう、そっと……。時折、波間のしずかさに息をのむ。まなざしはいくども波に押し流される。それでもなお水平線のむこう、そのずっとむこうにあこがれをいだいたのは、たしかにそのときだった。

(岸辺を呼ぶ
おもわず岸辺を呼んだ)




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