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宇宙人の抜け殻(絵・ひがしもとしろう)

宇宙人の抜け殻(絵・ひがしもとしろう)


 田舎には道なんてなくていい。田舎は多孔性だからおもしろい。田舎にはあちこちに抜け道があり、穴がある。穴というのは、落とし穴ではない。ぽっかりと空いた空間も穴である。草むらをかきわけていったさきになにがあるのか、それを知りたくて毎日、知らないところへでかけていた。
 ある日、宇宙人の死体を発見した。死体、というよりは、抜け殻のようなものだった。友だちは、これはたんなるコスチュームだといった。しかし、ぼくはぜったいにこれは宇宙人の抜け殻だと主張しつづけた。
 ぼくの気迫に気圧されたのか、やがて友だちも主張をひるがえし、宇宙人の抜け殻を三千円でゆずってほしいなどといいだした。
 ぼくは三千円で、宇宙人の抜け殻よりもほしいものがあった。
 だからぼくは宇宙人の抜け殻を友だちに売ってしまった。
 友だちはその後、学校にこなくなった。
 心配になって彼の家をたずねると、彼は宇宙人の抜け殻を着て家じゅうを徘徊しているのだと彼のお母さんに説明された。
 彼の部屋にいくと、彼はほんとうに宇宙人の抜け殻を着用していた。
「学校にはいくよ」
「うん」
「そのうちぜったいにいく。みんなにも伝えておいてくれ」
「わかった、伝えておく」
 その後、彼は家族みんなでどこかへ越してしまった。
 数日後、母親といっしょにデパートへいった。屋上ではヒーローショーがはじまっていた。
 あの宇宙人が、いた。河原で見たあの宇宙人の抜け殻とそっくりなのが、ちょうど、ヒーローと戦っているところだった。
 つぎの日、ヒーローショーを観ていた子が「あれは宇宙人ではなく、怪獣だ」と教えてくれた。


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