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十月


唾奇 × Sweet William / Good Enough feat. kiki vivi lily



きょうもまた、この〝だれでもなさ〟をひきずりながら、だれでもないだれかのくちぶりをまねること。四六時中、水平にひたされた、うすっぺらい影。息をとめるとそいつがゆっくりとぼくの心臓ににじりよってくる。

   *

図書館で借りた本のしおりひもが、本のまんなかでうつくしい「し」の字になってねむっているのを見ると、はっとする。まだだれもこの本を読んでいないのだ、ということよりも、しおりひもが完璧なまでの「し」の字になって、ページとページ、行と行をただよう空気を澄んだものにしていることに、なんていうか畏怖の念を感じるのだ。おそるおそるしおりひもにふれると、はらりとおちる。そしてそこにはしおりひもの眠りの名残がのこっている。紙の本には、ありとあらゆるところに「からくり」があるので、なかなか、たのしい。

   *

どこからやってきたのか。みみずが窓辺をはっている。みみずは一回一回、ひと呼吸ひと呼吸、どこまでものびやかにのび、ゆるやかにちぢこまる。みみずの際限のないひたむきさにひたっているうちに、じぶんさえも無脊椎の生きもののように感じられてくるからふしぎだ。
もしかしたら、このみみずは、かつてはしおりひもだったのではないか。神さまのいたずらかなにかで、みみずになってしまったのか。あるいはみずからのぞんで、みみずになりたかったのか。

   *

こんな厚さ一ミリにも満たない思考でも、
一万回つづけられればたいしたものではないか。

二羽の蝶のゆくえにじっと目をこらす。さえずりの遠さ。




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