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九月


中村 中 / 裸電球 ~Album version~


中学二年生のときだったか。美術の先生は、時間があまると決まって物語をきかせてくれた。世間話のようなものから本格的な怪談噺まで、レパートリーは豊富だった。
いまでもおぼえているのは、「のっぽがちびに恋をしたはなし」だ。
タイトルどおり、ある日、背の高い男が背の低い女性に恋心をいだく。あれこれとアプローチをするものの、女性は「背の高いひとはいやだ」の一点張り。見こみなし。
しかし、男はあきらめない。足を切ってみじかくする、という大手術をうけ、短足になるのだ。
それを知った女性は感激のあまり涙をながし、男のおもいをうけとめる。めでたくふたりはむすばれる。
かんたんにいえば、そういうはなしだった。
ぼくはしばらくくちびるをわななかせ胸をふるわせていたが、クラスメイトはみないちように、ばかにしたように「足だけみじかくしたらそれこそ不格好じゃん!」とか「それでふられたらどうするつもりなんだ?」とか、あれこれとさわぎたて、わらいあっていた。
その後、ぼくは牛乳をたくさんのみ、背をのばす器具を通販で買ったりして高身長の男をめざしたのだが、時すでに遅し。中学三年生くらいですっかり、ストップしてしまった。
もし背の低いぼくが、背の高いひとに恋をしたら、どうすればいいのか。どんなふうに努力すればむくわれるのか。
長年、その問題に頭をかかえていたが、あるとき、しりあいの女性にきくと、すんなりとこたえがかえってきた。
「身長のハンデをものともしないくらいの愛をぶつけてみやがれ!」、と。
そんなふうに率直にいえてしまえるひとは、いいなあ、とおもう。しかし、きっと、そんなふうに率直にいえてしまえるひとからすれば、こんなふうに率直にいえずに悩み街道をうろついている人間はいやだろう。
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