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八月


岡林信康 コペルニクス的転回のすすめ



(ふいに風を見失う。八月)

   *

海辺に窓の枠のぶぶんが落ちていた。
目の高さまでかかげて、
肖像、とつぶやいてみる。
ちっともわらえない。

   *

それから、やむことのない波音を持ち帰った。
食器のうえにおき、それを食した。
ナイフとフォークで、ほんのすこしの哀切を
ていねいにおりこみながら
それを食した。
ちっともわらえない。

   *

(近所のちいさな公園で太極拳の練習をするひとたちがいた。なんていうか、徹底して現在進行形でありながらも、どこか〝身の丈をなつかしむ〟動作だった。遅延につぐ遅延。迂回につぐ迂回。枯れ葉もまた、迂回に迂回をかさねながら落ちるのか。さっきからずっと耳もとで気まぐれにこの季節のあらすじを書きかえるのは、二匹の蝶のしわざだろう。もしかしたら、しみひとつないかなしみにふれている、のかもしれない)

   *

真夜中。視線がことばをさがしあぐねている。
読むというよりは、ただたんに
ことばとすれちがっているだけ。
ページをめくりながらも、
猛スピードで走りすぎるバイクの爆音。
救急車のサイレンと、のらいぬのとおぼえ。
しろく透きとおった維管束のなかを
垂直に吸いあげられていくような、
そんな心地よさ。
ねむりにおちるまえ。
すこしだけ、わらえた気がした。


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