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八月


Dave Brubeck - Take Five



風がふけば
ことりの死を
落ち葉がかくまう

雲の影がさっとよぎり
小川のせせらぎが歌をそえる

草木もまた その死をいたむ
たった一羽のことりのために

   *

そこまで書いて、急に嫌気がさした。しばらくは詩――のようなもの――を書くのはやめようとおもう。おもうが、しばらくするとまた詩――のようなもの――を書いてしまう。
窓の外ではカラスが「アホ―」と鳴いている。
むかしから、カラスは「アホー」と鳴くからアホなのではない、とおもっていた。ゴミ集積場のゴミ袋をあさっているときは狂喜乱舞、生きることのしたたかさ、がめつさをぼくたちにつきつけてくるが、なんとなく、ぼうっとしているときのあのアホさかげんといったらない。なにかを悟っているようでもあるし、まったくなにも考えていない、じぶんがカラスであることさえも度外視しているようでもある(もちろん、カラスにとってじぶんはなにものであるかなどどうでもいいことかもしれないが)。
道ばたでくちばしをぽかんをあけているすがたは、ほんとうにアホだ。むかしのひとはあれを見てカラスはアホだときめつけたのだろう。カラスは記憶力がいいし狡猾である。しかし、あのまのびした横っ面は、まぎれもなく、アホだ、アホである。断言していい。

   *

八月のグラスは汗っかきだ、水滴がまるで迷子のようにふるふるとふるえている。風もまた、見えない種子をふるわせ、ありもしない日付をまいあがらせる。
きょうは中村中さんの『未練通り』を聴いている。このひとの歌のほとんどは存在論だとおもう。男とか女とか、そういったおもてむきの理由をかなぐりすてたむこうには、いったいなにがあるのだろう。
本棚から本をとりだせば、本一冊分のすきまに、わすれがたいかなしみがある。こんな日は、いつかの果実の記憶だけたずさえて、風と散歩をしてみたい。
ページをめくる。日付変更線。


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