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静けさの復習(89)

(神様、ぼくたちのことを知っていませんか。なんでもいいからひとつくらい、ぼくたちのことを知りませんか。よかったらぼくたちにぼくたちのことを教えてください)
   *
 月が青いと、ぼくたちの舌も青い。べー。
   *
 日曜日。雨降りのどさくさにまぎれてぼくはこいびとをつよく抱きしめた。つよく抱きしめれば抱きしめるほどこいびとはかたくなで素っ気なく、無感動だった。
――うしろから抱きしめられるのは好きじゃないの。
 とこいびとは本のページをめくりながらいった。
――では、まえから抱きしめさせていただきます。
 ぼくは即座にこいびとのまえにいって正座をした。
 するとこいびとはにこっと笑って本を置き、ぼくをやわらかく抱きしめてくれた。
 雨粒が窓を溶かすように窓ガラスに付着している。雨音というのは、日曜日、それも窓際で聞くからいいのだとぼくは思った。
 たとえば、一滴の雨にもぼくたちの微笑が映り込むとすれば、それはきっとすばらしい証明ではないだろうか。
――眠ろう、きみが白髪になるまで。
 とぼくはいった。
――ええ、眠りましょう、あなたが猫背になるまで。
 とこいびとはいった。

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