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静けさの復習(70)

 うす暗く、物音ひとつしないまちの裏通りに孤児がひとり取り残されている。ぼくたちはすばやく――それでいてなるべくすこやかに――拾い上げなければならない。なぜならその子はぼくたちの子どもなのだから。だからぼくたちはぼくたちの子どもと出会うためにもまちのなかをえんえんとさまよう必要があるのだ。
――もしどこかでぼくたちの子どもがいたら、ぼくたちはなんて命名するだろう?
 ぼくはややまわりくどいいいかたをした。
――男の子でも、女の子でも、「ひびき」がいいと思うのだけれど、いずれにしても「ひびき」しかないような気がする。
 こいびともややまわりくどいいいかたをした。
――ぼくたちの子どもはきっとかしこいだろうから、このまちのへりをなぞるように泣くだろうね。
――わたしもそう思う、そのほうがわたしたちも見つけやすいだろうし。とにかくへりを歩きましょう。
 それからしばらくぼくたちは無言でまちのへりをさまよった、さまよいつづけた……。


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