FC2ブログ

記事一覧

静けさの復習(62)

……きのう、幽霊とか亡霊とかいいあったせいだろうか。夜明けまえに意識が覚醒して奇妙な体験をした。トイレにいこうと上体を起こすのだが、枕もとにはまだじぶんが寝ている。しかたなく、もう一度横になり、起き上がる。しかし、というかやはり、枕もとにはまだまぬけな寝顔がある。まるで、そう、幽体離脱のような不可思議な現象。このままベッドを抜けだしたらどうなるのか。一生、肉体のなかに戻ることなく、この世界をさまよわなければならないのだろうか。幽体となったぼくは、試みに頬をつねってみた。痛くない。つぎに、頬を殴る。やっぱり、痛みはない。焦る。焦る、焦る。幽体となっても心臓だけはどくどく鳴っている。心音が全身に響き渡っている。ベッド脇には洋服ダンスがある。ぼくは、じぶんに衝撃を与えるべくその洋服ダンスに頭突きを見舞った。見事なまでに痛みがあった。目のまえに銀粉が飛び、額が割れたかと思うほど熱い。成功だ! ぼくは無事、生還したのだ! 心のなかで叫んだとき、はっと目が覚めた。ぼくはベッドのしたの床に転げ落ちていた。


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント