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静けさの復習(57)

静けさの復習(57)(写真・時本景亮さん)
(写真・時本景亮)


 気まぐれに立ち寄った教会でぼくたちはまずおたがいの距離を祈った。どうか末永くいっしょにいられますようにと。
 それから先ほど目にした数々の光景――水辺のうつくしさやこわれた自転車、鼻をぬらした子犬など――を祈った。どうか末永くみんなそのままでいられますようにと。
 とりとめもなく祈りを捧げながらも、ぼくたちは斜めまえにいる老人を注意深く観察した。
 その老人がいつ祈りをやめるか、ぼくたちはしばらく待ってみたが、だめだった。その老人の祈りは永遠の円環のなかで祈りつづけられているかのようだった。
 ぼくたちは、どちらからともなく立ち上がり教会の外へでた。ぼくが伸びをするとこいびとも伸びをした。やけに夕日がいびつだった。
――ここはかわいたまちね。
 とこいびとがつぶやいた。
――わたしたちとは縁もゆかりもないひとたちのための、かわいたまちね。
 それからこいびとは「わたしたちに似たひとに会ってみたい」といった。ぼくは、なぜだろう、反射的に眉をしかめた。




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