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静けさの復習(48)

静けさの復習(48)(写真・時本景亮さん)
(写真・時本景亮)


 コインランドリーで毛布を乾燥機に入れていると、見まわりにやってきたのだろう、管理人のおじさんに「こんにちは」と話しかけられ、ぼくもこいびとも「こんにちは」と返事をした。
 そのとき、ぼくはふと、この管理人のおじさんのことをよく知っているような気がした。なぜならこの管理人のおじさんのまなざしに、ぼくのことをよく知っているかのような、そんな親しみの情が宿っているようだった。
 いや、親しみといっても、よくここで見かける、くらいのものかもしれない。
 それでも、うれしかった。なぜかすごくうれしい。
 ぼくはもっとこの管理人のおじさんとことばやまなざしを交わしたかったが、なぜかこいびとにわるい気がした。そっとこいびとのほうへ視線を向けると、こいびとはじっと、乾燥機のなかでぐるぐるまわりつづける毛布を眺めていた。
 外にでるともうすっかり夜のとばりが降りていた。
――わたし、あの管理人のおじさん、好き。
――感じのいいひとだよね。
――またこんな日に出会えるといいね。
――そうだね。
 ぼくは反射的にそうこたえてみたものの、「こんな日」というのがなんなのかよくわからなかった。


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