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S先生のことば

 小学校四年生のころ担任のS先生は、いたずら好きの男子生徒にはジャイアントスイングという愛の制裁をくわえることで有名だった。ぼくも何度かジャイアントスイングの餌食となった(ただたんに巻き添えをくっただけであるが)。もちろん、いまのご時世では問題になっていたことだろう。
 そんなS先生とトイレでばったり出くわしたとき、「生まれ変わったらなにになりたい」と聞かれた。ぼくはおしっこをしながら熟考したあと、「鳥になりたいけど、鳥になったら鳥だということがわからないから、どうすればいいですか?」とS先生に聞いてみた。
S先生もおしっこをしながらくちびるを突きだし首をひねっていたが、ふいに「きみは鳥にあこがれているひとになりたいんだね」といった。
 そのときはよくわからなかったが、二十代はじめごろにふとそのことばをおもいだし、鳥にあこがれているひと、というのはなんてすてきだろうとおもった。鳥にあこがれているひとになりたい、とおもった。
 鳥にあこがれているひと、というのは、なかなかむつかしい。かんたんなようで、かんたんじゃない。ぼくはいまも、鳥にあこがれているとはいえない気がする。
 なぜいえないのか。それすらも、いえない。



放哉さん
(なんとなく、放哉さん)


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