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静けさの復習(34)

(……そういえば、ぼくにはときどき雨の数をかぞえる癖があった。もちろん、雨の数をかぞえるなんてとうてい無理な話だけれど、それでもなぜかぼんやりと雨の様子を眺めていると、雨の数が正確にかぞえられているような、そんな安堵感が得られるのだ。子どものころはよく雨の数をかぞえられるなんていうと友だちに不審がられたり、からかわれたりしたものだ。じゃあいま何滴かいってみろよと迫られたこともある。しかし、何滴とか、何粒とか、そういったことではない。正確に数えられるというのは、ただたんに「ひとつ、ふたつ、みっつ……」と数えていくことではないのだ。そういうことをいってもだれにも理解されなかった。次第に、そういうことはいってはいけないことだとじぶんにいいきかすようにもなった。そういうことはいってはいけないことだとじぶんにいいきかせているうちに、ぼくはすっかり雨の数のかぞえかたを忘れてしまった)


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