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静けさの復習(6)

 郵便局のそばにちいさな郵便ポストがあった。ぼくがわざと架空の葉書を投函しようとすると、こいびとはなんのためらいもなく鳥の死骸を放り込んだ。
――子どもじみたことはきらいだな。
 ぼくは眉間にしわをつくっていった。
――良心的な郵便配達員さんが天国に届けてくれると思って……。
 こいびとは三日月形の眉をひょいとつり上げていった。


静けさの復習(6)(時本景亮さん)
(写真・時本景亮)


 きょうもこのまちで木々はこのまちに囚われている。ぼくたちもまた不自然に歩かされている。ひとも木も、みずから歌をうたうことはできない。ひたすら立ち並ぶものと、ひたすら歩きつづけるものとのあいだにあるのは、監視の目だ。ぼくは、すぐに猫背になりたがるじぶんを律するべく、だれかが見ているぞ、とつぶやく。すると、いままでかなしみのオブジェだった木々が、まるで慰めのように、さわさわ、とこたえてくれた。
 でも風が吹いた気配はない。風さえも、このまちで、このまちに操られているようなそんな気がする。
――みかんの皮をむくように、すべてのビルがむきだしになればいいね。
 とぼくはいった。
――じゃあ、ビルのなかのひとたちははずかしいね。
 こいびとが笑う。
――はずかしいまま仕事をしなきゃならないね。


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