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アイシテイルの死


The xx - On Hold (Official Video)



アイシテイルの死




予鈴が鳴っても動けなかった

僕は物理Ⅱの教科書を抱えたまま
渡り廊下の隅っこで硬くうずくまる
アイシテイルを見つけたのだ

ちょうど梁の上のトタンが欠けていて
その向こうから他の鳥たちが
哀れむように見守っている、
右へ左へ滑空しながら

アイシテイルの嘴からはみ出ている脚が
昆虫か何かの脚が、ぴくりと動く
その瞬間、僕は多くの死を思い出す
(路上で夏の灼熱にやられたカマキリ)
(いたずらに羽をもぎとられた蜻蛉)
(線路の側溝でミイラと化した仔猫)

僕はそれらに
荼毘に付したそれらに
アイシテイルと命名したのだった
永遠性を解く前にきっとこの
アイシテイルも命名しなければならない

昆虫か何かの脚に生えた和毛が陽射しを受け
それと同時に一滴、赤く、美しい血が
ひび割れた打ちっ放しの廊下に滴り落ちる
まるで難解な数式がほどかれるように

僕はもっと早い段階で君を呼ぶべきだった
空に幾何学模様を描く君に叫ぶべきだった
(アイシテイルアイシテイルと……)

今、音叉のように正確に悲しみを調律しても
それが何だというのだ、
生きているうちに君を愛したかった
例えきれいごとにすぎないと言われようとも
僕たち人間の驕りにすぎないとしても

やがて教材を持った教師が現れる
教師は僕にとても聞きとりにくい
言葉で命令したあと、アイシテイルに
唾を吐いた
少しのためらいもなく




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