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君がいたころ


Satie - Je te veux



君がいたころ
近所のぶち猫はとんぼ返りをやめなかった
木々の梢は教養そのもので
水辺にそびえる小さな格言が口笛を吹くのだ
僕は散らかった部屋で標榜を
あるいは喜びをあるいは愛を
見つけるのが上手かった

しかし君はもういない

一つの後悔が吹き荒れる夜に
僕は決まって嗚咽を漏らす
ぶち猫はサイレンに狂乱し
木々の梢が悲しみ故にたわむ
君は知っているだろうか、
水辺の涙は全て枯渇し格言が或うろんな画商によって
精神から葬られたことを

僕の部屋に残されたものは
だから標榜の果皮だけだった
そこから干からびた失われたなんとも言えないにおいが
鼻孔をつんと刺激するのだ

その刺激をも
君は所有していない


(日本海詩壇入選作品/年間優秀賞)




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