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隠遁者ロゾー


50 Cent - If I Can't



(私はまず自分にとっての良き理解者・良き記述者を心がけなければならない
そして常に理解者とは記述者とは何かを自問し続ける義務もある
世界を探索するのはその後で十分だ)

 *

その川辺は薄暗く
肌理の粗い秘密は葦の原だった
いくつもの眼差しが
光の乱反射によって分散し断片化を起こす
メモには一言「彼もまた三マイル走る」

……古くなった乾電池と折り畳み傘と
白い布に隠された桐箱と人込みの中の庭園と
継ぎ目のない服とドラム式乾燥機と
市立図書館のラベルと和装した王子と……

化粧を落として手足を氷水につける
白目は剥き出しで復讐を企んでいる
無機質のようになりたいと思い立つ
書庫に向かうために、
これまでの講義録を、
こっそりと持ち出す。

 *

痩せっぽちで矮小な空席をめぐる数々のやりとり
――なぜこんな隘路に入り込んだのか?
――なぜこんな場所に洗面器があるのか?
――いずれにせよ耳の形は虚構に似ている

「これは琺瑯引きのクラゲです」

その日私の視界に映るすべての事象が
憂鬱の羊のように明白だった



(「詩と思想」読者投稿欄入選作品)




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