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わたしと亀と清志郎(6)

わたしと亀と清志郎(6)
(絵・ひがしもとしろう)



 某月某日
 亀と相性のいい音楽は、ジャズでもタンゴでもなく、クラシックだ。わたしは、おもいたつなりさっそく近所の電器屋ですぐれた防水加工がほどこされたラジカセを買い、ガラスケースのなかで水にひたっている清志郎のかたわらに設置した。モーツァルトの曲なんかがゆるやかに盛大にながれだすと、清志郎は、なぜかすこしだけまぶたをおろしてピンク色の舌をなんどもだし入れしはじめた。うとうととねむたそうにしているかれの表情は、なんとも無邪気でてらいがなくて、うつくしい。
――清志郎、あなたってほんとうに科白のない映画ね。つまらないわ。
 かれの表情を見つめながら、わたしはずいぶんといじわるなことをいってしまう。
――このまま、いつまでも亀のまま、ねむっていましょう。しずかに熟れていきましょう。できあがったばかりの夏のふりでもしていましょうよ、おたがいに。




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