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十三ヵ月目の季節を

十三ヵ月目の季節を(1)



十三ヵ月目の季節を折り紙のように折りたたんでいく
何度も 幾度も 恋人のかたちを思い出しながら

私の指の一つ一つがまとまりのない意志を持ち
私のまなざしの一つ一つが包摂のない目的に縛られている
胸の深部の棺はそのまま無風の静けさにうずくまっている

午睡 いやそれ以上の負荷がかかっているらしい

色つきの季節の端と端を合わせることで
黙読に近い かぐわしい過去の言葉が立ちのぼるが
すべては基層を失ったものの 飽食の泡である

素早く庭先を横切る子どもがいる
家じゅうの 扉の底と 窓の奥からにじみ出て
奪われた私の体温を追いかける子どもの影が過ぎる
そのたびに「折りたたむ」という偏愛の呼気がすり減ってしまう
我に返るのはほんの一瞬で すぐに季節の触り心地にほだされてしまう

恋人と 私との 伸びきった船の上の渡し守
今も私たちを幻想の鋳型にはめたまま待ちわびているのだろうか?

赤い日傘をさしてうねりの中を流れていったあの日
二人しか知りえない炎症を刻んだ碑を建てたあの日
少しずつあの日というのが無名の風化にのみ込まれていく

そしてやがて基礎のない打撲のみが
私の持ち得るゆいいつの癒しとして明示されるだろう
恋人のまとっていた寒気も暖気も
あどけない光に透かされて見えなくなってしまうだろう

優秀な閲覧者になってからの私たちが心からいとおしい

別れと同時に植えた植物の影が季節を揺らし
屋根裏にひそんだ雫が一滴一滴 肩に落ちる
しかし私は何ものにも優しさを示すことなく粛々と
色つきの季節を恋人のかたちに変えていく
潔癖なまでに白い 白い罪を償っていく

汚れた指先では埋め合わすことのできない沈黙
呼びかけられても反応しないまま沈みつづける藻屑
迷妄という意識のかけらに映り込んだ書物
あらゆる余白に浸透する胞子
どこかに散乱してしまった臓腑たち

紙飛行機を飛ばすことでそれらを見つけようとは思わない
これ以上 過去の皮膚に切り込みを入れるつもりはない

ただ
私は十三ヵ月目の季節を折り紙のように折りたたんでいく



十三ヵ月目の季節を(2)


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