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八月の芝生の上で

八月の芝生の上で



幸福は犬の舌のようにあどけなく
八月の芝生の上で輝いている

八月の芝生の上で
ぼくは予告もなく黙らされてしまう
完璧ともいえるほどの
〈青年〉のかたちをしたまま
やさしい、
なんてやさしい解放だろう
鳥が光の鍵盤をたたいている
家の窓から窓へ
魚が伝言をつたえていく
「誰か国境の鍵を持っていませんか?」と

もう一人のぼくが椰子の葉箒をつかって
損なわれたものの番号を払い落す
蜂蜜のようににじみ出る樹液の音を聴きながら
もう邂逅と呼べそうなできごとはないのだと知りながら

八月の芝生の上で、
すべては八月の芝生の上で
手のひらはこうばしく
深緑の眩暈にくらくらっとしてしまう
咳をするにも気が引けるのだ

「まばたきを間違えるとすぐに秋だよ」


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