FC2ブログ

記事一覧

暮れなずむ鳥は往かない

暮れなずむ鳥は往かない(1)



暗く、深い、ふたつの硝子がおまえを縛る。

おまえを視界の網に幽閉し内部からおまえを
奪い去ろうとする。おまえをくちばしを翼を
羽音をとまり木を餌場を、おまえの雛をも。

暗く、深い、ふたつの硝子を持つおまえの影
がその町の時と地層を透過して知らない国々
の水を汲みふたたび元の鞘におさまる。
おまえは弁当の残飯を漁りごみ捨て場のポリ
袋を食い破り町のそこここに波紋を広げる。
息絶えた建物のあばら骨の隙間をかいくぐり
死者たちの残した断片を拾い集める。
間違って自ら葬列に加わってしまうと冷やや
かな方言がおまえの体じゅうに戒めの艀を生
むのだが。

切り裂くたびにゆるやかに畳まれる植物。
不均衡な円柱の中に埋め込まれた知性。
少し泳いでくると言って眠りに入った老人。

暗く、深い、ふたつの硝子はそれらを厖大な
まなざしでとらえたままおまえを悩ましつづ
ける。
悩まされながらも、なにひとつとして暗記す
ることの叶わなかった書物をなぐさめるため
に、やがて訪れる闇の証言をしりぞけるため
におまえはおまえの伝記を書き上げなければ
ならぬ。おまえは好むと好まざるとにかかわ
らず久しい者たちの額を言葉に即したのだ。

すべての淵は愛されたか、とおまえは慟哭す
る。
無論どこからも、返答も、揺らぎもない。
暗く、深い、ふたつの硝子に映り込むのはど
れもがらくただ。



暮れなずむ鳥は往かない(2)


暮れなずむ鳥は往かない(3)

スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント