FC2ブログ

記事一覧

鳥取のスケッチ(二〇一五年二月)

鳥取のスケッチ(二〇一五年二月)(1)


風のない日、
津ノ井駅から鳥取駅まで行く汽車のなかで、
『菱』という
地元の同人誌をぱらぱらとめくった。

かつて大人たちは、私が問いを口にするたびに、腕を組んだ。
今、子供たちが問いを口にするたびに、私は腕を組む。
――こんな人間が詩を書いていてもいいのだろうか?

(飼い主とはぐれてしまった猫が、
何度もあくびをする。
何度もあくびをしながらゆっくりと老いていく……)

私はもう、若くもなく、清潔でもなく、
かといって貧しくもなく愚痴っぽくもなく、
すべてをひっくるめて、

(すべてをひっくるめて、)

改札を抜けると、
突然、群衆が希薄になった。
そのうちの、一人の眼窩をのぞき込むと、草原だった。
――みんな、モディリアニの描く肖像画みたいだ。

つめたい咳をする。
つめたい咳をしながら、太平線通りを歩く。
ヨーロッパもアジアもふくんだ、一冊の本を売ろうと思うが、
はたして邯鄲堂の店主は買い取ってくれるだろうか。
――もしだめならマゼラン星雲にでも放ってしまおう。

後ろを振り返ると、目があった。

夜。
棕櫚の葉でバッタをつくりながら、
私の眠りが、この、
ぎしぎしと悲鳴を上げる脊椎を越え、砂丘を越え
ていく感覚にとらわれる。
だからといって、遠い町に住みたい、わけではない。

私は、
まだ名前のない、年老いた猫を、呼んだ。

おいで。


鳥取のスケッチ(二〇一五年二月)(2)


鳥取のスケッチ(二〇一五年二月)(3)


スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント