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マイ・フェイバリット・シングス


John Coltrane - My Favorite Things



マイ・フェイバリット・シングス(1)


なんて黙示録的なもの悲しさなのだろう
この曲のなかでいまも暮らしている
といってもだれもふりむかない

だから
コルトレーン、
メロンパンを食べるよ
あなたの食べ残したぶんまでちゃんと
メロンパンを食べるよ
あなたが食べられなかったぶん
ものすごく真剣に、切実に
メロンパンを食べるよ


マイ・フェイバリット・シングス(2)


メロンパンのざりざりのところが
まんまとセロファンのようにめくれたら
ぼくはきっと日差しに透かしてみるだろう
フラガール、
フラフープ、
フラジャイル……などと
音の
さざなみの
円周の
輪のなかで
くちずさみながら

それから洗濯をして掃除機をかけて
あなたの情熱に満たされた部屋で
ぼくはあおむけになりたい

いつも駅のホームで見かける猫のことや
交差点の角に置かれていた花束のことや
レヴィナスの哲学書なんかについて考えたい
ときどき、コーヒーに砂糖を入れすぎてしまうのを反省しながら


マイ・フェイバリット・シングス(3)


コルトレーン、
電車はつり革を定義づけるために
走りつづけるのかと思うほど
ぼくは日々、つり革のフラガールな、
フラフープな、フラジャイルな抵抗を
この手のひらで実感するんだ
いつか純文学でも書くよ
あなたは天国でもっと、
もっとやってくれ

(あなたがそこにいてくれるうちは
ぼくもまだここで生きられる
ジャズってやつはすてきだね)


マイ・フェイバリット・シングス(4)


コルトレーン、
あなたの問題は
ぼくの問題でもあるし
あなたの理解は
ぼくの理解でもある
もしこの世のなかで通用している価値が
すべてセミの鳴き声のようなものだったとすれば
コルトレーン、
コルトレーン、
お願いだから演奏をやめないでほしい

コルトレーン、
ぼくはハローページで
あなたのうちを探してみたけれど
なぜだろう、見つけられなかった
公園のベンチでメロンパンを食べていた
天使から奪いとったハローページだというのに……

コルトレーン、
じつはぼくの心臓なんて
あなたの音楽性にふれるだけで
たちまちホオズキから
イチジクに変わってしまうんだ

でも、だいじょうぶ、当分は生きられる
人生はふまじめでふたしかなものだから

気が向いたら未使用のコンサートチケットで
紙飛行機でも折って飛ばしてみるよ
風が硬くて冷たくて
鳥も鳴くのを忘れてしまったかのような
そんなもの悲しい街角で
あなたとすれちがうときのための
目印のために
紙飛行機でも折って飛ばしてみるよ


マイ・フェイバリット・シングス(5)


じゃあ、
そろそろ、
メロンパンだ。
メロンパンを食べるよ
あなたの食べ残したぶんまでちゃんと
メロンパンを食べるよ
あなたが食べられなかったぶん
ものすごく真剣に、切実に、
メロンパンを食べるよ

メロンパンのざりざりのところが
まんまとセロファンのようにめくれたら

(……めくれたら?)


マイ・フェイバリット・シングス(6)


コルトレーン、
ぼくの人生の行間に
メロンパンとジャズは最高だね


マイ・フェイバリット・シングス(7)




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