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詩作品「鼻ほじり」(ひがしもとしろうさんの絵とともに)


The Carpenters - Yesterday Once More



鼻ほじり1(ひがしもとしろうさん)


鼻ほじり2(ひがしもとしろうさん)



彼は生まれたときから鼻をほじっていた
泣くのを忘れ、産声さえも上げることなく、
羊水まみれのままひたすら無言で鼻くそを取り出すのに余念がなかった
こんなにも執拗に鼻をほじくる赤ん坊ははじめてだと産婦人科医が驚くのをよそに、
鼻をほじくることのできない人生はなんて空虚に満ちたものだろう
と思いながら彼は鼻をほじっていた
幼稚園のときも小学校のころも、中学生になっても、
彼は平然と鼻をほじくり、鼻くそを取り出して、食べた
(食べないときは、他人の服になすりつけたり、
もう一度、鼻のなかに押し込んだりした)
自分の鼻くそは泣けるくらいまずかったが、
他人の鼻くそを食べたいとは思わなかった
そんな彼にも好きな異性ができて、
どうやら彼女は、鼻くそを食べる男は好みではない、ということがわかった
しかしそれでも彼は鼻をほじるのをやめなかった
どうすれば鼻をほじりながらも彼女を振り向かすことができるか、
えんえん、えんえんと考えつづけた
(もちろん、思考をめぐらす間も鼻をほじるのをやめなかった)
ときどき鼻から血が出て、
鼻をほじるのを中断しなければならなかった
彼は、鼻をほじることも、鼻くそを食べることもできず、
幾度も胸をかき乱したくなる衝動に襲われた
我慢しているとそのうち禁断症状が出はじめて、しかたなく、
親や妹、飼い犬の鼻をほじくった
やがて親も飼い犬も死んでしまい、妹だけが残った
さすがにいい年になった妹の鼻をほじくるのは憚られた
こういうとき恋人がいてくれたらどんなにしあわせだろう、
恋人の鼻をほじくることができたら……
彼は、まだいない恋人の鼻をほじくる夢を見ながら、
今日もベッドを真っ赤に染めるのだった


鼻ほじり3(ひがしもとしろうさん)


鼻ほじり4(ひがしもとしろうさん)


鼻ほじり5(ひがしもとしろうさん)



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