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詩作品「器の商人」(ひがしもとしろうさんの絵とともに)


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器の商人1(ひがしもとしろうさん)


器の商人2(ひがしもとしろうさん)



私たち器の商人たち 各々のまぶたに水鳥の影がよぎりようやく朝を迎える 葬送行進曲を聴きながら 旅行の本をめくりながら 光を知るところからはじまる生活 新聞の見出し――「真昼の死の領域」「死の勝利/死の核心」「その男の美学に死する」――にざっと目を通す 私たち器の商人たち 川底で葬列を成す魚たちと並行して走る 朝食をとらなかった者から先に脱落していく 〈形こそ我々の究極!〉《形こそ我々の究極!》 光のない森に踏み込むと そこは私たち器の商人たちを遮るための霧を製造している 少しでも故郷を望めば永久に抜け出せない 〈感覚も平和だ!〉《感覚も平和だ!》 器がすべる 北へ 南へ 寺の鐘が――必要とされないもののように――ひとりでにふるえるころ 私たち器の商人たちは蝶番のはずれた町に出る 器が売れる 日差しに蜻蛉の羽を透かして過去を見つめる老婆 ある一つの手がかりから処女の謎を解き明かそうとする青年 川底で葬列を成した魚たちが死者に戻りその数ははかり知れない 私たち器の商人たちは売る 売りつづける 歪みのない落ち着き払った馬 群舞する蝶(蝶(蝶 〈うつくしい器は神の重みをもしのぐ!〉《うつくしい器は神の重みをもしのぐ!》 夜になると 私たち器の商人たちは 少女の寝息を盗みながら家路を急ぐ 視力を失った靴音 風が腐敗をうながし 闇が膀胱を隠す 誰かの肺の内側で ねじれ ちぢこまった花粉まみれの蝶が死んでいる その蝶はやがて器の基礎になる


器の商人3(ひがしもとしろうさん)


器の商人4(ひがしもとしろうさん)


器の商人5(ひがしもとしろうさん)


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