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After Memories ――菜の花の頃―― (船井淑子作品「菜の花の頃」へのオマージュ)


本のページをめくるたびに、きのうよりもはるか遠くに過ぎ去る
なにかがあって、わたしはそれを過去とは呼べない

   *

ゆうぐれの窓辺でうとうとしていると
菜の花の黄色がふいに
風に舞い上がり
まるでせつない蝶の羽ばたきだった

(机の上の、見覚えのある便箋や万年筆、なつかしい老眼鏡……)

いつのまにか母が目の前で本を読んでいて、
行と行、ページとページをさまよう視線はあまりにもふたしかで
もうすこしだけ長く、このひとを抱きしめてあげたかった

(いつか一緒に歌をうたいながら、手をつなぎながら帰った帰り道……)

いつのまにか母が目の前で本を閉じていて、
とくに口もとに浮かべた微笑なんか、わたしとそっくりで
もうすこしだけ長く、わたしを抱きしめてほしかった

――お母さん、おたがいいつも、淋しかったね

   *

本のページをめくるたびに、きょうよりもずっと近しい
なにかがあって、わたしはそれを今とは呼べない





〇船井淑子さんの絵には〝生活の晴れ間〟があるようにおもう。
ときにはつまずき、ときにはくじけそうになったりする日々のなかに、
ふと立ち上がる風や日ざし、花々のいろどりに元気がでるような、
そんなささやかな晴れ間の気配、ちいさな希望のにおいが。
一日一日にたいして、人生にたいして、
敬虔な気持ちに、前向きにさせられる。

フナイタケヒコ・船井淑子「絵画の巣箱」(DM)
◇「フナイタケヒコ・船井淑子二人展~絵画の巣箱~」は5月24日から30日まで、鳥取市本町1丁目のギャラリーあんどうで。


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