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Blue Memories (4) ――フナイタケヒコ作品「シリーズ Blue Drawing 」へのオマージュ――

部屋のかたすみにある青い本棚、そこの二、三冊分のスペースを指差しながら、
しあわせの青い鳥がいるのだと、あなたはそう言ったのだ

   *

なんのためらいもなくページをめくるしぐさがあざやかで、
まるでつぎの季節を呼びたがっているようで、

風のなかに種があるとすれば、それはきっと沈黙の種で、
カーテンがひるがえるたびに日付やことば、祈りのようなものも
すべてさらってしまう、だからわたしたちは寡黙だった

(モンブランのインク壷や地球儀やアスパラの缶詰、
錆びたハーモニカやペーパーナイフ、巻き貝の殻……)

なにを読んでいるの? と訊いても、
どこか不機嫌そうに、十九世紀の冒険家や
二十世紀の哲学者の名前を口にするだけのあなたが、
あの夏の日の午後、読んで聞かせてくれたのは、
アポリネールの「ミラボー橋」だった

――夜よこい、鐘もなれ、日々はすぎ、僕は残る

木漏れ日が、部屋に迷い込んだ鳥のようにせつなくて、
だけどもうその鳥は抱擁を奏でられないのだと知っていて、

   *

部屋のかたすみにある青い本棚、そこの二、三冊分のスペースは、
まるで帰り道のつづきのように永遠だった


blue crossing 04N4

Blue Crossing 04N4



 ミラボー橋   ギィヨーム・アポリネール 窪田般彌訳


ミラボー橋の下をセーヌが流れる
  二人の恋も
 僕は思い出さねばならないのか
喜びはつねに苦しみのあとにきた

 夜よこい 鐘もなれ
 日々はすぎ 僕は残る

手に手を重ねて向きあったままでいると
  二人の腕の橋下を
 永遠の眼ざしをした
あんなに疲れた波が流れる

 夜よこい 鐘もなれ
 日々はすぎ 僕は残る

恋はすぎる この流れる水のように
  恋はすぎ去る
 人の世の何と歩みのおそいこと
希望ばかりが何と激しく燃えること

 夜よこい 鐘もなれ
 日々はすぎ 僕は残る

日々が去り月日が消える
  すぎた時も
 昔の恋も戻ってこない
ミラボー橋の下をセーヌが流れる

 夜よこい 鐘もなれ
 日々はすぎ 僕は残る


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