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Blue Memories (3) ――フナイタケヒコ作品「シリーズ Blue Drawing 」へのオマージュ――

(明け方の庭は水っぽくて、水槽みたいで、
きっとどこかに淋しい魚はいたのだろう)

あなたははじめてその庭に招待してくれたとき、
わたしにひとつしかない椅子をすすめてくれた

わたしが白木のテーブルの前でピアニストのまねごとをすると、
あなたはおおげさに髪をふりみだして指揮者を演じてみせたのだ

わたしたちは、まるで年端もいかない子どものようにくつくつわらいながら、
いつか海岸で拾った壜、ありふれた一本の壜のなかに
入れるべきものはなにかと考えたりした

(明け方の庭は水っぽくて、水槽みたいで、
きっとどこかに淋しい魚はいたのだろう)

いつからか額をつけて体温をたしかめあうこともなく、
おたがいに宛てた手紙を読みあうこともなくなった

わたしがその壜を叩き割ったとき、あなたは眉ひとつ動かさず、
いずれはどこかに行かなければならないのだと、そう言ってのけたのだ

わたしたちは、まるでなにもかもわかりきった大人のようにくちびるを
固く閉ざしたまま、もう悲しみさえもない便箋と、
その周辺に散らばってしまった破片ばかりを見つめつづけた

(明け方の庭は水っぽくて、水槽みたいで、
きっとどこかに淋しい魚はいたのだろう)


blue drawing-b

Blue Drawing-b




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