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Blue Memories (2) ――フナイタケヒコ作品「シリーズ Blue Drawing 」へのオマージュ――

――空の海と書くんだ、お坊さんじゃないよ
あなたはその犬を「そらうみさん」と呼んだ

   *

わたしたちよりも早起きで、わたしよりもまっさきに
あなたの胸もとに飛び込んでしまうその犬を、
わたしは決して「そらうみさん」とは呼ばなかった

凛々しいまゆげをしているくせに、
蟻の群れやはじけた石榴におびえたり
かと思えばむきだしの脚力で
坂道を駆け上がってみたり

ときどき風にうたうひとのように、空の青さ、海の青さに目を細めたり

あなたはいちいちわらって、うつくしい歩行だとか、ものおぼえがいいとか、
尻尾のこととか、耳の角度とか、背中の曲線とか、

たとえば、サティの曲がかかると
そのしずけさにそっと目をつむるその犬は、
いつも余白のにおいを求めて嗅ぎまわっていたその犬は、
悲しいまでに潔癖で、無防備なまでに率直だった

(呼び鈴の音やひまわりのサンダル、木漏れ日の影、
辞典類や世界地図や古びたタイプライター……)

一滴の雨粒がその犬の頬を濡らしたとき
わたしはふいに、呼びたくなったのだ

   *

はじめてその犬を拾ったときとおなじように
あなたはもう一度、かがみ込んで、その犬を埋めた
――いまでもほら、そこの茂みから飛び出してきそうだろ?


Blue Drawing 光へ(青)-a

Blue Drawing 光へ(青)-a




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