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記事一覧

おもうこと

物語を書くには、〝わたし〟の眼と〝あなた〟の眼が必要になるとおもいます。わたしの眼というのは、たとえば日々の過ごしかただったり仕事への姿勢だったり。読書も、そうです。もういっぽうの、あなたの眼というのは、他者とのかかわりかたによってつちかわれるものではないでしょうか。もっといえば出会いそのものがぼくのありかたを変えてくれます。高知の詩人大家正志さんと知りあえたことでふたば工房から詩集をだし、詩誌『...

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タイムマインド(潤一編)(5)

       一 ここ二週間はなんのへんてつもなく過ごした。ゆいいつ変わったことといえば、折り畳み式のケータイを買ってもらったこと。ほしいほしいと前からねだっていたし、このたびのテストの点もよかったからだ。だけど、不満もあった。ありとあらゆるロックがかかっていて、メールすらできないのだ。お母さんの言い分は、「塾の帰りに連絡を取り合うぐらいだし、そもそも学校には持っていけないでしょう? メールなんて...

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(いくすじもの冬の日ざしが)(絵・ひがしもとしろう)

彼女の部屋は砂丘の地下にあり、ときどき、砂時計のように砂がふってくる――いつか埋もれてしまうよいくらぼくが忠告しても、わらっている本棚のうえでは猫があくびをしている午後は「あおむけの蟬」になるのだという   *雨を思う前に、水のにおいをさせていた湖のほとりには、なにかしら花のきざしがあるのかもしれないまなざしが遠さを見ることはないすでに甘い香りに包まれていたゆらめく影を壊すまで   *いくすじもの冬...

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タイムマインド(潤一編)(4)

「今となっては武勇伝っていう感じだよ」 僕は余裕を見せて言った。「何が武勇伝だよ。おまえが落ちるところを思い出すだけで、俺の方が冷や冷やするっていうのによぉ」 翔ちゃんはあきれたような表情だった。「まあ、トラウマにならなくてよかったな」 僕は、ふと立ち止まった。どうしたんだよ? と翔ちゃん。 理科室はもう廊下の突き当たりに見えている。「トラウマっていうほどのものでもないんだけど……一つだけ気になるこ...

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(晩夏の向日葵の灰を)(絵・ひがしもとしろう)

半そで半ズボン、季節はずれの子どもたちが私のかたわらをわっと駆け抜けるとき私は激しくせき込みながらも公園のベンチでサンドイッチを食べているふたりの天使がうらやましいふたごのようでうらやましい靴をなくしたふりをして仲間にくわわろうかそれとも、   *時折、椅子の座面で金魚がはねるのぞきこんでみてもさざなみひとつたたないもしかしたら、凪でも棲みついているのかもしれないあるいは金魚そのものが、凪そのもの...

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タイムマインド(潤一編)(3)

 二年前――小学校四年のとき──のことだ。夏休みに、僕は翔ちゃんといっしょに海に行った。保護者は僕の両親だった。 太陽が激しく照りつける日で、浜辺には多くの人がいた。水着姿の僕と翔ちゃんは、波打ち際で遊んだ。菓子の包装紙や錆びついたキーホルダーを波がさらっていった。両親はパラソルの下でほほえんでいた。大きな波を待つサーファーやビーチバレーをやっている学生らしき人たちや、女性に声をかけているお兄さんたち...

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書物(絵・ひがしもとしろう)

閉じられているときは波のように漂流を好み、ふとひらかれた瞬間、定住する言葉の集まり。...

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タイムマインド(潤一編)(2)

 校内に間の抜けたチャイムが鳴り渡った。みんな教科書を持ってぞろぞろと教室を出ていく。五時間目は理科室に移動しなければならない。翔ちゃんは慌てて自分の席に戻ると、物がごちゃごちゃにつまった机から教科書を探し出した。 僕も文房具と教科書を取り出す。久野君、と舌足らずな女子の声がした。 顔を上げると、近くに河名愛と橋本梨恵が立っていた。僕を呼んだのは、橋本の方だった。二人とも──色違いではあるが──レース...

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(風や光の間に)(絵・ひがしもとしろう)

鳥が羽ばたけば空には見えないかすり傷が魚が飛び跳ねれば空には見えない揺らめきが私たちが見えないそれを見ることができるのは風や光の間にいるからです...

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タイムマインド(潤一編)(1)

       平成十七年 七月「生まれ変わり?」 僕は調子はずれの声を上げた。「そうだよ、そんなことも知らねぇのかよ。まだまだお子ちゃまだな、久野潤一君は」 翔ちゃんこと──長谷川翔太はそう言って、外国人ばりに肩をすくめた。自分だってまだ小学生じゃん、と、僕は内心つぶやいた。「つまり、輪廻転生のことだよ」 四字熟語だかなんだかわからない、小難しい言葉に僕はぐうの音も出ない。 窓の外から夏の日差しと、...

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