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記事一覧

(風がふけば)(絵・ひがしもとしろう)

風がふけば草花はたがいにささやきあいほほえみあいながらありふれた日付のふりをする...

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タイムマインド(愛美編)(40)

 教室に戻ると午後の部がはじまっていた。カーテンの閉められた暗い教室にはまだあまり人が来ていない。私は窓際にいる惣ちゃんのところへ行き、遅れてごめんと謝った。 これから盛り上がろうぜー、というマイク越しの声が聞こえる。近野君の声だった。つづいて女子たちの歓声も聞こえた。体育館でライブがはじまったようだ。軽妙なイントロが流れ出す。トランジスタ・ラジオ、いくぜー、と近野君は叫んだ。「となりのトトロ」を...

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(ふと、)(絵・ひがしもとしろう)

ふと、痛みをともなわない方位などないと思った。鳥は、だからほんの少しだけ微熱を宿しながらも自ら飛び立つほうへ「かもしれない」をはばたかせる。あくまで「かもしれない」という不確定要素を。それ以外には考えられない。...

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タイムマインド(愛美編)(39)

       十三 文化祭の日がやってきた。天気は良好、少しでも体を動かせば暖かさを感じられる、申し分ない文化祭日和だった──というのも、キャンプファイアのごとく火柱を上げ、そのまわりで「マイムマイム」の曲に合わせて踊る、最後の締めがあるからだ。しかし、惣ちゃんは踊ることができないので、惣ちゃんが取り残された気分にならないかどうか、私は気になっていた。もちろん私は彼のそばにいるつもりだけれど。 私と...

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(さびついた蝶番をこわすように、)(絵・ひがしもとしろう)

さびついた蝶番をこわすように、風は吹きぬけるのに。さびついた蝶番をこわすように、風は吹きぬけるのに。さびついた蝶番をこわすように、私は吹きぬける、ことができない。...

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タイムマインド(愛美編)(38)

「本当は頭の固い人なんだけどねぇ。あんな、生まれ変わりだなんて、非現実的なことを信じてるのよ」 病院を出てから、静子さんはそう言って笑った。私はうまく返事を返せなかった。私たちの足取りは重かった。「ごめんなさいね。気まずい思いをさせてしまって」「いえ……」 話が切れ切れになる。明るい話題に変えたいけれど、こういうときにかぎって、私の脳みそは働いてくれない。頭の中がやけにパンパンにふくれている。 タク...

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距離(絵・ひがしもとしろう)

星に手を伸ばせば地球から遠ざかり草花を覗き込めば地球に近づく地球は遠ざかり近づきしながらも私との距離は淋しいままである...

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タイムマインド(愛美編)(37)

「あなた!」 静子さんはとがめるような口調で言ってから、「気にしないでね、愛美ちゃん。ときどきおかしなことを言うのよ」「だから、ボケとらんと、なんべんも言っとるだろ」 大竹さんは打って変わって厳然とした目つきをした。「……当時は、わしも、惣一があんなことを言い出すとは思わんかった。今も半信半疑じゃ。だからこそ、この、愛美さんを見てから、判断しようと思ったんじゃ」「判断するも何も、愛美ちゃんは愛美ちゃ...

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(とてもいい匂いのする海岸で)(絵・ひがしもとしろう)

とてもいい匂いのする海岸でしろい波立ちはあくまでしろく軽やかな歓声はなおも軽やかにこのままどこまでも水平線のせつなさを端から端までたどっていけたらどんなにいいだろうこの日のこの記憶や歩行さえもいつか日差しに透きとおるのだとあなたはわらった...

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タイムマインド(愛美編)(36)

 勤労感謝の日――文化祭が間近に迫った日に、静子さんから電話がかかってきた。会えるかしら、と言われた。のんびりお昼ご飯を食べていた私は驚いたけれど、滅多にない静子さんからの誘いがうれしかった。 受話器を置いて三十分後、静子さんはタクシーに乗ってやってきた。彼女は茶褐色のセーターの上にカーディガンという簡素な服装だった。染めるのを怠っていたのか、ショートカットの髪には白いものが交じっている。あれ? と...

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