FC2ブログ

記事一覧

九月

HIGHWAYS / JEFF BECK GROUPおびただしいほどの蛾が、まるで機関銃のように襲ってきた。風のくぼみに身をかくすと、アテナイの裁判所。ソクラテスの有名な弁明がきこえてくる。「わたしは自分が何も知らないということを知っている」と。なにごともいちから問いなおすしかないのだ、いちから名づけ、いちからうたがいつづけること。慣れ親しんだものにこそ、きれいさっぱり、別れを告げる必要がある。もっとも手ばなす価値がある。...

続きを読む

九月

Nirvana - Smells Like Teen Spirit昨夜、友人は酒に酔っ払ったまま扇風機を抱いて風呂にはいったらしい。どれほど酔っていたのかときけば、扇風機の羽根が魚に見えたといって、わらう。「もう扇風機をしまう時期だからちょうどよかったよ」、と。いったいなにがよかったのか、ぼくにはさっぱりわからない。   *図書館で借りた本のしおりひもが、本のまんなかでうつくしい「し」の字になってねむっているのを見ると、はっとす...

続きを読む

九月(「本と本屋とわたしの話」)

Coldplay - The Hardest Part 古書店「街の草」さんからスマートレターが届いた。開封するとそこには小冊子『本と本屋とわたしの話』(14号)と手紙がはいっていた。手紙にはでかでかとした、恰幅のいい書きぶりで「押し売りで恐縮なのですが、『本と本屋と~』14号が出ましたので、必要かと(勝手に)存じ、お送りいたします」とあり、おもわずふきだしてしまった。そして、まだお会いしたことのない店主、加納さんの笑顔――...

続きを読む

九月(NHKラジオ『文化講演会』、「いま、ここ、私~悔いの無い生き方」、千代川宗禎さん)

 朝六時、いつものように寝床で仰臥したままぼうっと天井を見つめながらNHKラジオ第二放送「文化講演会」(再放送)を聴く。講師は天長山迎福寺副住職千代川宗禎さん。曹洞宗のお坊さんといえど十代二十代のころはいろいろと悩みや葛藤があったようだが、山居して修行をかさねるうちに、身心一如(「心身」ではないところに注目)――こころよりもまずはからだを慣らすことが大事だと気づく。からだが慣れればあとでこころがつい...

続きを読む

辻斬り(絵・ひがしもとしろう)

今の時代、辻斬りなんてと思われるかもしれないが私の町にはよく辻斬りが出る最初の犠牲者はおばあさんだった飼い犬の散歩中にいきなり背後から斬られたのだ(おばあさんは断末魔の叫びを叫び飼い犬のポチ太郎は猛スピードで逃げた)ただ、ここで断っておく必要があるおばあさんは何も殺されたわけではない斬られた直後はあまりのショックに気を失っていたもののその日の夜、お気に入りのテレビ番組があったのでそれを見ているうち...

続きを読む

九月(「すっぴん!」、谷川俊太郎、バウムクーヘン)

たかをくくろうか(ビートたけし) 午前九時ごろ。NHKラジオ第一放送「すっぴん!」をながしながら仕事をしていると、詩人の谷川俊太郎さんのお声がきこえてきた。パーソナリティーは作家の高橋源一郎さんだから、おもしろくないはずがない。トークは軽妙洒脱、にぎやかなことばが縦横無尽に飛びかっている(それもそのはず、おふたりの出会いは三十五年以上もまえ。谷川さんは四十九歳、高橋さんはまだ三十代前半だったという...

続きを読む

九月

Purple Haze (Live at the Atlanta Pop Festival) (Digital Video)アントン・チェーホフのことばに、劇の第一幕に登場した銃は第三幕でかならず発射されるというのがある。たんなる伏線の回収というよりは、人間の――書き手あるいは読み手の――願望や欲求のあらわれ、のようなものだろう。とくにおもしろかったわけでもないが、ブラッド・ピットとジュリア・ロバーツが共演した映画『ザ・メキシカン』をおもいだす。世界一うつくしい...

続きを読む

糖衣村(絵・ひがしもとしろう)

気持ちのいい風に吹かれて風の市が開かれる東が少し欠けている落ち葉がせわしなく踊る糖衣の空を見上げても歌詞はない明治屋で小平が盛んに呼びかける紅葉さんが帽子を幟のように長く長く引き伸ばしていく私たちは母国を数えるのをやめて火葬場から薪に使えるものをかき集めてくる理性が怠惰に居座っている散歩でもしていてくださいとなだめる門番の承諾を得てぞくぞくと人々がやってくる砂漠の住人も洞窟の住人もこの日だけは仲が...

続きを読む

表札のない場所で

路傍の花が咲く前に、故郷に別れを告げて、ただ明るい、ただ明るい道を歩き始める。どの家も、窓も、扉も失っているが、人の気配は濃密で、木製のスプーンでヨーグルトのびんの底をつつきながら、我々の春は明るい、ただ明るい、と歌っている。夜空に下弦の月がぶら下がっていて、その紗幕の向こうでは鴫が地図を栽培している。(金がないので、暦が、日付を売り、家が、窓を売り、扉を売る。今、この瞬間も、世界はどこかで売られ...

続きを読む

九月

Guns N' Roses - Don't Cryわが家のタモの木の近くにある五輪塔が、なにものかによってこわされていた。犯人さがしをする気はないし、そもそも犯人なんていないのかもしれない。ぼくのちいさな願望のあらわれ、なのかもしれない。かつてはここには祠もあったようだが、いまはない。五輪塔は、時代はそうふるくはなく、せいぜい江戸期。これまでになんど、いたずらにあったのか。つみあげては、くずす。くずしては、つみあげる。な...

続きを読む