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記事一覧

タイムマインド(エピローグ)

 ──誕生日おめでとう。 お父さんはそう言いながら、背中に隠していたものを見せてくれた。サッカーボールだった。 ありがとう、と僕は素直によろこんだ。 ──サッカーやりたいって言ってたものね。よかったね、舜也(しゅんや)。 お母さんがテーブルの上にケーキを置く。 僕はボールを抱きしめた。ねぇ、外で遊んできていい? ──もう夕方よ、明日にしなさい。 ──いいじゃないか、ちょっとくらい。 お父さんはいつも僕の味...

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タイムマインド(潤一編)(84)

       二十七 卒業式が終わり、そして教室に戻って、各々に卒業証書が手渡された。女子のほとんどが泣いていて、男子のほとんどが笑顔だった。 担任の近野は教壇に立ち、後ろ手に窓の外を眺めながら、言った。「この三年間、あっと言う間だったな……」 女子たちは一斉に近野のところに集まった。 僕は学生鞄を片手に立ち上がり、使い古した席から離れた。廊下の手前で、久野、と、僕を呼び止める声が聞こえた。 振り向...

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タイムマインド(潤一編)(83)

       二十六 卒業式の前日の夜、僕がカレーライスを食べていると、グレーのスーツを着た母がリビングに入ってきた。「明日はこんな感じでいいかしら」 わざわざ買ったのだろう。張り切りすぎだろと思うが、親にとっては、うれしいイベントの一つかもしれない。「まあ、それでいいんじゃない。何を着たって変わらないよ」 皮肉を口にしてみたが、母はおかまいなく、袖や足もとをチェックしている。子どもみたいな仕種に...

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タイムマインド(潤一編)(82)

       二十五 僕は、前世の記憶を捨てた。過去に左右されるなんてばかげたことだ。...

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タイムマインド(潤一編)(81)

       二十四 文化祭の日以来、宮崎初美は僕を避けるようになった。それもそうだろう、あんなにもひどいことをしたのだから。 焦れば焦るほど、何事にも集中できなくなった。彼女の首を絞める夢を見て、慌てて飛び起きる、ということが何度もあった。 時間が急速に過ぎていった。あっという間に春になり、夏が来た。 ある日、僕は鳥取の大竹静子さんのうちに電話をした。初瀬惣一、初瀬惣次、そして僕──三人の人生を生...

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