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記事一覧

二月

雨は本降りになり、行く手が雨脚に閉ざされそうになっている。...

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タイムマインド(潤一編)(55)

       十六 夜行バスは翌朝七時に鳥取駅前に着いた。ステップから降りると朝日がまぶしかった。もう後戻りはできない。なにせ来てしまったのだ。 鳥取の駅は思ったよりでかかった。東京と違って人通りは少ないが、全然田舎臭くない。知らないはずの街並みに、僕はたちまちなつかしさを覚えた。 僕は伸びをして関節をぽきぽき鳴らすと、ロータリーでタクシーに乗り込んだ。初瀬惣一の家に行く前に立ち寄りたいところがあ...

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未使用のノートに昨日の出来事を書きつけているうちに、物語は訪れる。

あなたが帰ってきたのは夜中に降り始めた雨の少し前だった*意外にも月のにおいと鳥のはばたきは似ているように思う*ひらかれた書物の片隅に蓼の花が咲いていて風の瞬きに呼応する姿はあまりにも狂おしい...

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タイムマインド(潤一編)(54)

 翌朝。ロッベンと散歩に出かけようとしたら、母に止められた。荷物も何も持ってないじゃん、と抗議しても、外に出させてくれなかった。なぜそんなにも母は神経質になっているのだろう。今になって子煩悩を発揮されても迷惑だった。 結局、午前中は部屋で大人しく過ごした。夜行バスの時間は、午後八時三十分。まだまだ余裕はある。が、しかしこのまま家から抜け出すすべを見つけられなかったら、当分は鳥取に行けないだろう。 ...

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二月(「友達の詩」)

中村中 - 友達の詩風がふけば木の葉は舞い散り、そこからにじみでる沈黙のみが木々の姿勢をほぐそうとする。それでいて、ときどき風に舞いあがる木の葉といえば、一瞬一瞬、光をふくんで、ありもしない日付を呼びさます。樹間の静かさとともに――。...

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